2025 06 . 16
介護の基礎知識【高齢者向け】肉を使った嚥下食
高齢者にとって重要な栄養素のひとつたんぱく質を摂取するためにも、介護状態であっても肉の活用は欠かせません。そこで本記事では、肉をやわらかくする工夫も紹介します。
高齢者において、肉は重要なたんぱく質の摂取源。とはいえ、噛む力や飲み込む力が弱った方にとって、肉は食べにくい食材のひとつでもあります。調理の際にやわらかく加工をするなど、肉を使った嚥下食(主菜・副菜)のレシピをご紹介します。
※本記事の嚥下食レシピの対象は、形態食では「きざみ」食を食べられるぐらいの方としております。

目次index
肉をやわらかくする工夫とは?
肉をやわらかくする方法は、以下3点が挙げられます。
1.酢やワインなどの「酸性食品」に漬け込む
2.肉の筋を切断(スリット加工や筋切り加工など)
3.片栗粉などを使用し保水する。
では順番に説明していきましょう。
工夫1.酢やワインなどの「酸性食品」に漬け込む
肉が硬くなるいちばんの理由は、たんぱく質中の水分が逃げてしまうから。実は水分保持と強く関係があるのがpH値で、酸性か、アルカリ性かどちらかに傾ているほど、水分保持されやすい状態です。ところが肉は基本的にpH5と弱い酸性。実はこの数値、いちばん水分が逃げやすい状態なのです。そこで、肉を強い酸性に傾けるために利用するのが「酸性食品」。また肉の酵素が漬け込んだ酸性液内で活性化され、たんぱく質の分解を促進。結果、肉がやわらかくなるのです。
※pH値:ピ―エイチ値。酸性かアルカリ性かその程度を示す数値、水素イオン指数
酢やワイン以外にも、料理酒や炭酸水を利用しても良いでしょう。なお時間に余裕があれば、"漬け込む"よりも、"煮込む"方がさらに肉はやわらかくなります。
工夫2.肉の筋を切断(スリット加工や筋切り加工など)
肉の筋を切断することでやわらかくする方法もあります。切断する際は、専用の道具でなくてもOK。包丁の背、竹串やフォークを使って肉に穴を開けるような感覚で、トントンと叩きましょう。また筋を切断することで、加熱後に肉が縮むのを妨げるほか、熱が均一に通りやすくなるため、ぜひお試しください。
なお、肉によって筋の切断方法がやや異なります。
〈豚肉・牛肉の場合〉
赤身と脂身の間にある筋に対して包丁を立て、垂直に2〜3cmの間隔で切り込みを入れていきます。もし肉に厚みがある場合は、裏面も同じように筋切りをしていきましょう。
〈鶏肉(もも肉)の場合〉
皮に付いている脂肪を取り除いた後、フォークなどを使って肉に穴を開け、1cmくらいの切り込みを入れていきます。
工夫3.片栗粉を使用する
肉の調理前に片栗粉をまぶすことで、肉から水分が流れ出るのを防ぎ、調理後もやわらかさをキープできます。また、ただ単に肉がやわらかくなるだけでなく、しっとり感も出るので、より食べやすくなるでしょう。
レシピについてはこちら
※記事中の写真・イラストは全てイメージです。
この記事の監修

栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。