ベネッセパレットの介護食研究会
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パン粥

【高齢者向け】パン粥とは? 基本の作り方とポイントをご紹介

「パン粥」は高齢者や嚥下障害を持つ方々の介護食に適した、消化が良く食べやすい料理です。本記事では、パン粥の基本的な特徴や作り方、さらに提供時に気を付けるべきポイントを解説します。パンの選び方や、やわらかさの調整方法、保存のコツもご紹介します。

パン粥

パン粥は、高齢の方やそしゃく嚥下障害を抱える方々にとって、消化が良く、食べやすい食事のひとつです。嚥下訓練としては離乳食としても用いられるパン粥ですが、ここでは介護食としての役割や作り方から、保存方法、介護現場における注意点などをご紹介します。

目次index

1.パン粥とは?

パン粥

パン粥とは、パンを水や牛乳などでやわらかく煮込んだ料理です。赤ちゃんの離乳食としてポピュラーなものですが、最近は介護の現場やそしゃく嚥下障害のある方に適した食事としても注目されています。

パン粥の基本的な特徴

パン粥は、固形物を飲み込むことが難しい方でも、食べやすい食事として知られています。やわらかく仕上げることにより、嚥下能力の低下が見られる高齢者にも適しています。ここでは、パン粥の具体的な特徴とその利点について説明します。

・パン粥の特徴
そのままではパサつくパンも、小さくカットして水分や牛乳に浸して煮込むことで、嚥下機飲み込やすくなるのが大きな特徴です。

・パン粥の利点
食品単体で見ると、パンはお米よりも栄養価が高いため、効率的にエネルギー補給ができます。また、比較的消化しやすいのもメリットです。

パン粥の栄養価

パン粥の主な栄養素は、炭水化物です。そのためエネルギー源として優れています。
さらに、パン粥に食材を追加することで、食欲増進や栄養アップを図ることもえきます。ここではパン粥に追加したい食材(具材)と、栄養素を挙げました。

【パン粥の栄養をあげるひと工夫】

追加する食材(具材)

補給できる栄養素

牛乳で煮る

たんぱく質、カルシウム

豆乳で煮る

たんぱく質、鉄分、カルシウム

コンソメで煮る

たんぱく質、脂質、炭水化物、塩分

卵を加える

たんぱく質、脂質、ビタミンA、ビタミンB2、B 12、ビタミンD、ビタミンE

チーズを加える

たんぱく質、脂質、カルシウム、炭水化物、塩分

はちみつを加える

糖分(果糖、ブドウ糖)、ミネラル・ビタミン類

MCTオイルを加える

脂質(中鎖脂肪酸)

介護食としてのパン粥(離乳食との違い)

パン粥は離乳食としても利用されていますが、介護食として提供する場合は、その方の嚥下能力や栄養バランスに対して特別な配慮が必要です。

・離乳食と介護食の違い
離乳食のパン粥
・味付けは薄め
舌の味覚を感じる器官「味蕾(みらい)」は、赤ちゃんの方が発達しています。そのため赤ちゃんは薄味でも十分おいしさを感じられるので、離乳食のパン粥は薄めの味付けで作ります。
・サラッとした食感
赤ちゃんの喉は短く、誤嚥のリスクは低いため、介護食のパン粥と比較してサラッとした食感になります。
・量は少なめ
まだ母乳やミルクを飲んでいることが多いため、離乳食のパン粥も少量です。

介護食のパン粥
・おいしさを重視
高齢になると、舌の「味蕾」が、新生児の半分から3分の1まで減少して味覚が衰えてきます。さらに、唾液の減少や入れ歯の刺激、亜鉛の欠乏等でも味を感じにくくなってきます。そのため、介護食のパン粥は味付けが重要となります。
・とろみをつけて仕上げる
高齢者の喉は赤ちゃんに比べて長く、サラサラの液体は気管に入るリスクがあります。誤嚥を防ぐために、とろみ付けは欠かせません。
・量は多め
パン粥は、介護食の中で主食の役割を果たすものです。その方の栄養バランスに合わせて、エネルギーと栄養をしっかり補える量が必要になります。

・介護食としてのパン粥の役割
高齢になって活動量が減っても、生きるための栄養は必要です。加齢や嚥下能力の衰えで食事量が減ってしまうと、十分に栄養を補うことが難しくなります。これが高齢者の低栄養を引き起こす一因にもなります。ふんわりやわらかな食感とパンの風味が味わえるパン粥は、おいしさを楽しみながら栄養も補給できる役割を持っています。

2.パン粥の作り方

牛乳とパン

ここでは、パン粥の作り方を詳しくご紹介します。どんなパンが適しているか、また、嚥下が難しい方でも食べやすくする工夫も含めてわかりやすく解説します。

・パンの選び方
パン粥におすすめのパン
・食パン 
パン粥には、やわらかく水分を含みやすい食パンが適しています。基本的なパン粥のレシピも食パンを使ったものが多く、どなたにも作りやすいです。しかも食パンはスーパーやコンビニエンスストアなど、さまざまな店舗で販売されていますので、入手しやすいのも利点です。
避けたいパン
・メロンパン、フランスパンなど
もともとパンはパサつきやすいもの。そこに水分を含ませてやわらかく煮込むことで、誤嚥や窒息のリスクを軽減するのがパン粥です。しかし、メロンパンなど食べた時にボソボソしたかけらが出やすいパンや、フランスパンのように皮が硬くパサつきやすいパンは、パン粥でも避けた方が良いでしょう。

パン粥基本の作り方

パン粥のレシピはとてもシンプルです。パンと液体(牛乳や水)があれば、簡単に作ることができます。ここでは基本的なパン粥の作り方と、調理時のポイントをお伝えします。

・基本のパン粥 
〈材料〉(2人分)
食パン 6枚切り1枚半
牛乳 350ml
砂糖 小さじ2
〈作り方〉
1.ボウルにパンを小さくちぎって入れ、牛乳を注ぎます。
2.ラップをして冷蔵庫へ30分ほど置き、パンに牛乳を十分に浸しておきます。
3.鍋に1を入れて、弱火にかけます。
4.均一に火が通るように底から返してかき混ぜます。
5.トロトロになってきたら砂糖を加え、溶け切ったら火を止めます。

・調理時のポイント
煮込む前にしっかり牛乳をパンに含ませてふやかしておくと、比較的短時間でトロトロになります。
パンに含まれた砂糖や牛乳が焦げやすいので、急に強火などにせず弱火で加熱しましょう。また、十分に牛乳を吸っていないパンをかき混ぜると、団子状になるので注意してください。

やわらかさの調整方法
パン粥を食べやすくするには、「やわらかさ」が重要なポイントになります。個々のそしゃく嚥下機能に応じて、パンの大きさや煮込み時間を変えた調理法をご紹介します。

・飲み込みにくい時がある場合
⇒歯ぐきでつぶせる程度のやわらかさに
食パン(6枚切り1枚)を食べやすい大きさにちぎります。
小鍋に食パンと牛乳50〜100mlを入れ、斜めの中火でさっと煮ます。

・液体が飲み込みにくい時がある場合
⇒舌でつぶせる程度のやわらかさに
食パン(6枚切り1枚)を細かくちぎります。
小鍋に牛乳150mlを入れて、弱めの中火でトロトロになるまで煮込みます。

・液体が飲み込みにくい場合
⇒噛まなくて良い程度のやわらかさに
上記の「舌でつぶせる程度のやわらかさ」にしたパン粥を、フードプロセッサーにかけます。なめらかになったら、とろみ調整剤を加えてとろみを調整します。

3.介護場面での提供時の注意点

介助の様子

パン粥を、介護の現場で提供する際の注意点をお伝えします。そしゃく嚥下障害がある方への配慮、提供方法、食べるスピードや姿勢、トッピングの工夫をご紹介します。

・提供方法
食事の温度管理に気を配る
温かいパン粥は、甘いパンの香りで食欲をそそるだけでなく、食べ物を飲み込むために必要な「嚥下反射」を促します。嚥下反射とは、食べ物をごっくんと飲み込む運動で、加齢や病気によって反射が出にくくなってきます。
全ての食事に言えることですが、温かいものを温かく、冷たいものを冷たくして食べることで嚥下反射を刺激し、スムーズな飲み込みを助けます。 
食べる前に声かけを
せっかくのおいしい料理も、無言で提供されるのでは味気なく感じます。食べる前に「これは〇〇ですよ」等の声かけをして提供しましょう。パン粥は、「甘いパンの香りがしますね。温かくて美味しいですよ。」といったお声かけがあると安心して召し上がっていただけるでしょう。
ひと口の量に注意
ひと口の量が多すぎると飲み込みにくくなり、少なすぎると味が分かりにくくなります。ティースプーン1杯程度を目安にして、入居者さま・患者さまひとり一人に合った適量を見極めましょう。

・食べるスピード
そしゃくの回数は人によって異なり、食べるスピードもまちまちです。やわらかく調理したパン粥でも、必ず飲み込むのを確認してから、次へすすめましょう。

●食べる時の姿勢
安全・安心な食事の提供には、食事をする時の姿勢も重要です。基本は背筋を伸ばしてまっすぐ前を向いた姿勢です。病気や体の麻痺等で背筋を伸ばして座れない場合は、クッションなどを置いて調整しましょう。
また、あごが上がった状態では食べ物が気管に入りやすく、むせやすくなります。あごを少し引くようにするとむせにくくなり、飲み込みやすくなります。

●トッピングの工夫
見た目にもおいしそうで、いい香りがすると、食べる意欲が湧いてきます。必ずしも必要なものではありませんが、食べる楽しみを演出することも、介護食の役割ではないでしょうか。パン粥に手軽なトッピング食材をご紹介します。
粉砂糖、抹茶、ココア
甘く味付けしたパン粥に、むせない程度に軽く振ってトッピングすると見た目にも華やかになります。
ブラックペッパー、粉パセリなど
甘くないパン粥に合うトッピングです。緑が鮮やかな粉パセリを添えるのも目先が変わって、食欲をそそります。


パン粥は味付け次第で、食事風にもデザート風にもアレンジができるもの。ぜひ、介護食にパン粥を取り入れて、食事の楽しみを増やしてみてください。

※記事掲載のイラスト・写真はすべてイメージです。

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この記事の監修

栄養士

下口 貴正

長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。

長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。

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