ベネッセパレットの介護食研究会
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パン粥

高齢者にもやさしいソフト食パンとは?市販のおすすめとアレンジ例を紹介

高齢者向けソフト食パンの特徴と市販おすすめ3選を紹介。嚥下に配慮したアレンジ例も解説し、食事の楽しさと安心をサポートします。

高齢者の食事では、「噛みやすさ」や「嚥下のしやすさ」が重要なポイントです。中でも朝食や軽食で定番の「パン」は、かたさやパサつきが原因で食べにくさを感じる方も少なくありません。そんな中、注目されているのが「ソフト食パン」です。本記事では、ソフト食パンの特徴や市販品のおすすめ、さらに高齢者に合わせたアレンジ例までをご紹介します。

目次index

ソフト食パンとは?高齢者にやさしいパンの特徴

パンを食べる際の高齢者の悩みとして多いのが、かたさやパサつき、そして特にミミ(耳)の部分です。こうした食べにくさを解消するために、やわらかく食べやすい「ソフト食パン」が選ばれています。

ソフト食パンの一般的な特徴

「ソフト食パン」とは、通常の食パンよりもやわらかく、ミミまでやわらかい、あるいはミミがないタイプのパンを指します。商品によっては「ふんわり」や「しっとり」といった表現で、やわらかさや口当たりのよさを訴求しているものも多く、食べやすさを重視する幅広い層から支持されています。
焼き時間を短くするなど製法が工夫されており、水分が保たれやすいため、ミミまでやわらかく仕上がるのが特徴です。このため時間が経ってもパサつきにくく、高齢者にとっても食べやすいパンとなっています。
また、介護食品や専門のパンメーカーの通販では、嚥下やそしゃくの状態に合わせて選べる、用途別のパンも増加傾向にあります。

ユニバーサルデザインフード(UDF)とは

ソフト食パンを選ぶ際に参考になるのが、公益社団法人日本介護食品協議会が定めた「ユニバーサルデザインフード(UDF)」の区分です。これは、食品のやわらかさや食べやすさに応じて、以下の4段階に分類されています。

UDFの4区分
・容易にかめる
・歯ぐきでつぶせる
・舌でつぶせる
・かまなくてもよい

ソフト食パンは商品によって、「容易にかめる」から「舌でつぶせる」までの範囲にあたることが多く、この区分や実際の食感を確認し、食べる方の状態に合ったものを選ぶことが重要です。
※なお、トーストするとかたくなるため、UDFの対象外になる場合がある点には注意が必要です。

高齢者介護施設などでも注目される理由

ソフト食パンは、そのやわらかさや食べやすさに加え、介護現場での実用性や利便性の高さからも注目されています。具体的には、以下のような理由が挙げられます。

● 食事形態の多様化に対応しやすい
やわらかさを活かし、そのまま食べるほか、嚥下機能に合わせてペースト状やきざみ食などにも加工しやすいため、さまざまな食事形態に取り入れやすいことが特徴です。

●献立にバリエーションを持たせやすい
パン粥やフレンチトースト風、サンドイッチなど、調理の幅が広く、パンを使ったメニュー展開がしやすくなります。ご利用者の嗜好や状態に合わせた食事を柔軟に提供することが可能です。

●朝食からおやつまで幅広く使える
主食としてはもちろん、軽食やおやつ、補食としても利用できるため、1日の食事で活用できる場面が多いこともメリットです。

● 調理・保存の効率がよい
ソフト食パンの中には、個包装や冷凍保存に対応している製品もあります。また、やわらかさが安定しているため、現場での調理の手間を抑えることができます。食材の管理もしやすく、無駄が出にくいため導入しやすい食品といえます。

● 食べる楽しみを保てる
高齢者にもやさしい食感でありながら、しっかりとした味わいや香りが楽しめるため、食事の満足感を損ないません。

市販で買えるソフト食パンおすすめ3選

高齢者にやさしいやわらかさと風味を兼ね備えた、市販のソフト食パンを3つご紹介します。

① 山崎製パン「ダブルソフト」(UDF区分:容易にかめる)
長年愛される定番の食パンです。独自の製法によりミミまでやわらかく、しっとりとした食感が特徴です。ミミがやわらかいため高齢者にも食べやすく、さまざまな用途で使えます。
●    特徴:ミミまでやわらか、しっとり
●    栄養情報(6枚スライス/1枚あたり):約172kcal、塩分約0.8g
●    価格と入手しやすさ:250円程度。スーパーやコンビニなどで広く流通。

② 山崎製パン「ふんわり食パン」(UDF区分:容易にかめる)
やわらかさにこだわって開発された、しっとりふんわりとした食感の食パンです。ミミまでやわらかく仕上げられているため、パンのかたさが気になる方にも食べやすく、さまざまなメニューに使いやすいのが特徴です。
●    特徴:ふんわり、しっとり
●    栄養情報(6枚スライス/1枚あたり):約146kcal、塩分約0.6g
●    価格と入手しやすさ:250円前後。北海道を除く全国で販売。

③トップバリュ「しっとりやわらかな食感サンドイッチ用食パン」
ミミがなく、しっとりした、やわらかな食感が特徴のサンドイッチ用パン。口あたりが軽く、そのままでも食べやすいため、朝食や軽食に使いやすい一品です。
●  特徴:ミミがなく、しっとりした食感
●    栄養情報(6枚入り/1枚あたり):約33kcal、塩分約0.2g
●    価格と入手しやすさ:130円程度。全国のスーパー(イオン系列など)で販売。

※価格や取り扱いは地域・店舗によって異なります。なお、これらの商品は必ずしも高齢者専用に開発されたものではなく、やわらかさを重視してつくられた一般向けの製品です。

ソフト食パンをもっと食べやすく!高齢者にやさしいアレンジ例3選

ソフト食パンはそのままでもやわらかく食べやすいですが、先にご紹介したように、食事形態に応じたアレンジのしやすさも大きな魅力です。特に市販のものはそしゃく力や嚥下機能の状態に応じて、ひと手間加えることで、より安全においしく食べられます。
例えば、トーストのように表面がかたくなる加熱方法は避け、ミルクで煮込んだり、または蒸してしっとり仕上げたりする調理法で、ふんわりした仕上がりになるでしょう。

以下に、家庭や介護現場でも取り入れやすいアレンジ例をご紹介します。

ソフト食パンアレンジ例① 【パン粥】

やわらかくちぎった食パンを牛乳や豆乳で煮る「パン粥」は、とろみがあり、飲み込みやすい形態食です。食欲がないときや朝食にもふさわしいメニューです。
嚥下の状態やパンの種類によって、とろみの具合や仕上がりが異なるため、水分量を多めにしてミキサーにかけるのもおすすめです。
味付けは砂糖を使った甘めのものから、コーンスープやクリームシチュー、ビーフシチュー、トマト缶などを使った塩味系のスープ風にもアレンジでき、幅広く楽しめます。

▶︎「パン粥」の作り方はこちら
【高齢者向け】パン粥とは? 基本の作り方とポイントをご紹介

▶「パン粥」のアレンジ法はこちら
いつもの味に一工夫!パン粥のアレンジ方法

ソフト食パンアレンジ例② 【フレンチトースト】

フレンチトーストは卵液に浸したパンを焼く定番メニューです。嚥下が不安な方にはパンを細かくきざむなどといった工夫をすると飲み込みやすくなり、食べやすさが向上します。
卵は火が通りすぎるとかたくなるため、追加で加熱する際は、すでに火が通った部分を取り出し、火の通っていない部分のみ加熱するのがポイントです。こうした工夫によって、ふんわりした食感を保てるでしょう。

ソフト食パンアレンジ例③ 【とろとろクリームシチューパン】

パンのやわらかさとクリームシチューのとろみを活かした一品です。具材をじっくり煮込んだクリームシチューをパンにかけ、旨みをしっかりと染み込ませます。
スプーンですくいやすいやわらかさに仕上げることで、嚥下調整が必要な方でも食べられます。じゃがいもやにんじん、鶏肉などをやわらかく煮てからつぶす・きざむなどして調整します。パンと具材を組み合わせているので、食べ応えがあり、満腹感も得られます。

【まとめ】ソフト食パンで高齢者の食事にやさしさと楽しさを

ソフト食パンはやわらかく食べやすいため、高齢者の食事に取り入れやすい食材の一つです。市販のパンでも活用でき、嚥下の状態に合わせて調理することで、食べやすくもなります。

高齢者施設や病院での調理の負担を軽減するうえで、ソフト食パンの導入も選択肢の一つです。ソフト食パンの特徴と利点を踏まえたうえで、その方に適切な形で導入を検討してみてください。

この記事の監修

栄養士

下口 貴正

長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。

長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。

※記事掲載のイラスト・写真はすべてイメージです。

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