2025 04 . 04
高齢者の栄養高齢者の栄養失調が起こる要因と対策
高齢者の栄養失調には、食事バランスの偏りや摂食嚥下機能の低下が影響します。低栄養状態のチェック方法や効果的な改善方法などを紹介し、健康的な老後をサポートする情報を提供します。
高齢者の栄養失調は、エネルギー不足のほか、たんぱく質不足による新型栄養失調も問題になっています。また、要介護者が抱える問題の一つでもあります。高齢者における栄養失調の原因を知って、より良いサポートを提供する方法もご紹介します。

目次index
1.高齢者における栄養失調とは?
高齢者における栄養失調は、健康維持に必要なエネルギーや栄養素が不足した状態を指します。
日本では、75歳以上の約15~20%が低栄養リスクにあると報告されており、要介護状態にある高齢者ではさらにその割合が高まる傾向があります。この状態を放置すると、筋力の低下や免疫力の低下、さらには生活の質(QOL)の著しい低下を引き起こします。
栄養失調の種類と特徴
栄養失調には従来の「低栄養」だけでなく、食事量は十分でも、しっかりと栄養が摂れていない「新型栄養失調」の2種類があります。それぞれの特徴に応じた、適切な対策を講じることが重要です。
低栄養
従来型の栄養失調で、たんぱく質やエネルギーが著しく不足した状態を指します。加齢に伴う食欲の低下や噛む力の弱まり、また病気やストレスなどが原因となります。体重減少や筋肉量の減少、免疫力の低下などが進行します。
新型栄養失調
エネルギー摂取量は足りているものの、たんぱく質やビタミン、ミネラルといった特定の栄養素が不足している状態です。食事内容が偏ったり、インスタント食品の喫食頻度が高かったりする場合に多く見られます。食事は十分できているため、見た目には健康そうに見えますが、目に見えない筋肉量や免疫力が低下していることがあります。
主な症状とリスク
栄養失調が進行すると、次のような身体的および認知的リスクが生じます。
・筋力低下(サルコペニア)
・転倒や骨折のリスク増加
・感染症リスクの上昇(免疫力低下)
・認知機能の低下
たんぱく質不足やビタミンB群の不足は、認知機能の低下に直結することがわかっています。これにより、記憶力や判断力が低下し、さらなる生活機能の悪化につながります。
早期にリスクを把握し、適切に介入することが、栄養失調を防ぎ高齢者の健康を守るカギとなります。
2.栄養失調の原因と介護現場でできる対策
高齢者の栄養失調の原因は多岐にわたり、身体的、心理的、社会的な要因が絡み合っています。
食欲低下・そしゃく嚥下機能低下への対応と予防
食欲の低下やそしゃく嚥下機能の衰えは、高齢者の栄養不足に大きく影響します。
〈食欲低下への対応策〉
・香りや見た目の工夫
カレー粉やハーブを使った香り高いメニューや、彩り豊かな盛り付けが効果的です。
・環境づくり
楽しい雰囲気での食事は、食欲を引き出します。家族や友人と一緒に食べる、食事中にリラックスできる音楽を流すなども良い例です。
〈そしゃく嚥下機能の低下への対応策〉
・食事形態の調整
とろみ剤を使用した飲み物や、嚥下しやすいペースト状の食事が有効です。また、嚥下訓練を取り入れることで機能を維持・改善することが期待できます。
・介護者の支援
食事中の姿勢やタイミングを調整し、一口ごとのペースを確認します。
3.栄養状態のチェック方法
高齢者の栄養状態を定期的に評価することは、健康維持のために欠かせません。以下に、日常的に実施可能なチェック方法を紹介します。
日常的にチェックしておきたい指標
・体重とBMI
急激な体重減少やBMIの低下は栄養失調の兆候です。
・食事量
食事記録を付けることで、食事の偏りや不足を把握できます。
・フレイルチェックリスト
厚生労働省が提供するリストを活用し、自己評価を行います。以下のリンクを参考にしてください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000620854.pdf
参考文献
厚生労働省:「高齢者の低栄養の現状と対策」、「健康寿命を延ばすための栄養ガイドライン」
この記事の監修

栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。