ベネッセパレットの介護食研究会
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高齢者の栄養

嚥下食の宅配サービスとは? 施設や病院で広がる新しい食事支援のかたち

そしゃく嚥下機能が低下した方向けの食事づくりの負担を軽減する「嚥下食」の宅配サービスの利用が施設や病院で広がっています。本記事では、導入が進む背景や現場でのメリット、上手に取り入れるためのポイントを整理します。

嚥下食の食事づくりは、見た目や味つけ、食べやすさを均一にするために、多くの手間と時間が必要です。特に、利用者ごとに食形態が異なるため、毎食の調整も欠かせません。
近年、こうした負担を軽減する目的で、「嚥下食の宅配サービス」を活用する施設や病院が増えています。本記事では、嚥下食の宅配サービスが広がる背景と、それにより現場で生まれている新しい食事支援のあり方について解説します。

目次index

そもそも「嚥下食」とは?

嚥下食とは、そしゃくや嚥下機能が低下した方でも安全に食べられるよう、形や大きさ、まとまりを調整した食事です。食材の形状や舌触りを変えるほか、飲み込みのため口の中でまとまりやすいように工夫を施した調理がされています。

嚥下食の基準は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会が定めた「嚥下調整食分類2021」によって示されています。施設では「やわらかくする」「ミキサーにかける」「とろみをつける」といった工程を組み合わせて調整しています。

嚥下食について詳しくは以下記事を参照ください。
▶「嚥下(えんげ)食 とは? その必要性と分類について

「宅配」で届く嚥下食のサービスとは?

嚥下食の宅配サービスとは、おおむね「嚥下調整食分類」に沿った調理済みのメニューを施設や病院に届けるサービスです。冷蔵や冷凍状態のため、湯せんやレンジなどの加熱のみで提供でき、毎日定期的に利用できるサービスもあれば、必要な時にまとめて注文できるサービスもあります。

厨房で行っていた嚥下食の調理工程を外部に委ねることで、スタッフの負担を減らしつつ、一定の品質を保った食事を提供しやすくなります。

施設や病院で導入が進む背景

嚥下食づくりは、「調理スタッフ・専門知識・適切な設備」がそろって初めて成立する作業ですが、現場では主に以下の課題が顕在化していることが多くあります。

・慢性的な人手不足
少人数体制で利用者に相対している場合、調理スタッフと介護スタッフを兼任する場合もあります。そもそも人手が足りない状況下で、日々の業務とあわせて各個人の嚥下能力やそしゃく力に合わせた異なる食形態を同時に調理することは、大きな負担となります。

・調理担当者の専門知識のばらつき
嚥下食は、火の通し方や粘度の調整、ミキサーへのかけ方によって舌触りやまとまりが変わるため、調理担当者の経験によって仕上がりに差が出やすくなります。

・厨房設備の制約
ミキサーやスチーム機器などの調理器具が厨房内にあっても、複数の食形態を同時に作らなければならないなど、作業工程や調理時間の制約によって調理効率が低下することがあります。

・多様な食事形態への対応負担
常食・軟菜食・きざみ食・ミキサー食と食形態が各々で異なると、調理に時間がかかるだけでなく、配膳や調整の確認にも時間がかかります。

こうした状況は以前から課題とされていましたが、嚥下食の宅配サービスにより、手作りだけでは難しかった多様な対応が可能になるため、導入が進んでいます。

嚥下食の宅配サービスで現場の"困った"をサポート!職員の声に応えるメリットとは?

嚥下食の調理は工程が多く、特に朝夕の忙しい時間帯に、限られた人数で対応しなければならないなど、大きな負担となります。調理加工済みの嚥下食の利用を選択することで、準備から提供までの流れがスムーズになり、忙しい時間帯の効率をあげてくれます。

調理の負担が軽くなる

嚥下食は、レベルに応じた加熱の調整やまとまりの確認など、1食1食への細かな対応・工程が必要なため、通常の食事と比べて多くの手間がかかります。それに対し、嚥下食の宅配サービスを活用すれば、提供前の段階まで調理されているため、朝夕の忙しい時間帯でも短時間で準備可能です。調理器具を洗う手間も省けるため、後片づけの負担も軽減されます。

工程が安定し、ミスが起こりにくい

調理中の形や粘度の判断は細かく調整が必要なため、ベテランの調理スタッフであっても、日々の状態には変化が出ることがあります。その点、宅配サービスを利用すれば一定の規格で調理されているため、仕上がりに差が生じにくく、判断ミスも減らせます。

利用者に安心感をもたらす

嚥下食の宅配サービスの利用は、基本的にほぼ同じ品質で提供されるため、利用者は安心して食事を楽しめます。彩りや盛り付けに工夫されたものもあり、「予想以上に見た目もキレイで味もおいしい」「彩り豊かでメニューも豊富、安心して頼める」といった声があがることもあります。入居者の満足だけでなく、特に食事面で常に一定の品質が保たれるため、ご家族にとっても信頼につながりやすくなります。

嚥下食の宅配サービスは"代わり"ではなく"選択肢"のひとつ

嚥下食の宅配サービスの利用を考えるときに陥りやすいのが、ゼロヒャク思考。ですが、手作りの代替として使うのではなく、必要に応じて併用できるのが宅配サービスの利点でもあります。すでに取り入れている施設では、すべての食事を宅配サービスに切り替えるのではなく、必要な部分だけ宅配サービスで対応していることも少なくありません。これにより、調理担当者の負担を抑えつつ、利用者に合わせた柔軟な対応が可能になります。

併用という考え方

手作りと宅配サービスを組み合わせることで、負担を抑えながら満足度を維持できます。
●忙しい時間だけ(朝食や夕食時)のみ利用する
●嚥下食対応のミキサー食だけ宅配サービスに切り替える
●施設で実施している行事食や特別食は手作りで続ける

このような組み合わせで考えることで、負担を抑えつつ、利用者の満足度を維持しやすくなります。

一時的な利用や退院直後の支援にも役立つ

宅配サービスは短期間の利用にも適しています。体調や疲労、病状によってそしゃく嚥下機能が一時的に変化してしまい、食形態の調整が必要になる場合があるからです。また、急なスタッフの退職などの人員不足に際しても、宅配サービスを活用することで、調理の負担を軽減し、必要な支援を補えます。

さらに、導入のポイントを知りたい場合は、以下記事も参考にしてください。
▶「高齢者向け宅配弁当の選び方|施設導入の際のポイント
▶「忙しい施設必見!高齢者向け冷凍宅配弁当サービスの導入5つのメリットと活用法

どう導入すれば失敗しない?嚥下食の宅配サービスの取り入れ方

嚥下食の宅配サービスの導入は、まずは小さな範囲で様子を見ながら始めるのがおすすめです。

まずは試してみる

嚥下食の宅配サービスを実際に検討する際は、まずサンプル(試食品)を取り寄せ、見た目や味つけを確認することが重要です。これにより、利用者やご家族の反応、費用感との比較検討がしやすくなります。最近は、嚥下食の通販も気軽に利用できるため、選択肢として考えておいても良いでしょう。

選び方や活用法を詳しく知りたい場合は以下記事も参考にしてください。
▶「通販で手軽に始める嚥下食・介護食!冷凍・レトルト・市販商品の選び方と活用法

職員間で共有しておく

嚥下食の宅配サービスは提供時間の短縮だけでなく、ほとんど調理が不要なため、誰でも提供しやすいのも特徴のひとつです。そのため提供手順を職員間で共有することで、誰でも調理・配膳を担当でき、安定した対応が可能になります。加熱や盛り付け、配膳の確認などをあらかじめ共有しておくと安心です。看護師や介護スタッフ、調理スタッフなど、多職種間で連携し、情報を共有しながら進めましょう。

提供時のひと工夫が"食べたい気持ち"を引き出す

嚥下食の宅配サービスは彩りよく整えられていますが、温度や盛り付けに工夫を加えると、さらに魅力が高まります。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく提供すること、そして器の選び方に配慮することで、一層利用者の食欲を引き出す鍵となります。

また、食事の楽しさや満足感を高めるには、必要に応じて一口サイズにする、箸やスプーンを使いやすくする、声かけで食事のタイミングをサポートするといった心がけも効果的です。

【まとめ】嚥下食の宅配サービスは、食事の選択肢を広げるパートナー

嚥下食の宅配サービスは、毎日の調理負担の軽減と食事の質の維持に役立ちます。すべてを手作りから切り替える必要はなく、今の状況に合わせて必要な部分だけ取り入れる運用も広がっています。
職員の働きやすさと利用者への寄り添いを両立しながら、現場での食事支援の選択肢として嚥下食の宅配サービスを検討してみてください。

※記事掲載のイラスト・写真はすべてイメージです。

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この記事の監修

栄養士

下口 貴正

長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。

長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。

【参考文献】
日本摂食嚥下リハビリテーション学会|嚥下調整食分類 2021
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf

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