2026 03 . 25
パン粥嚥下食でパンは取り入れられる?注意点と食べやすくする工夫を解説
嚥下食でパンを取り入れる際は注意が必要です。パンは水分量が少ないため、パサつきやすく、口の中でまとまりにくい性質があります。本記事では、パンが飲み込みにくい理由と、パン粥を基本にペーストなど食べやすく調整する方法を解説します。

パンの中には手で簡単にちぎることができるほどやわらかく仕上がったものがあるため、一見すると「そのままの状態で嚥下食として食べられるのでは?」と思われがちです。しかし、嚥下機能が低下している方への提供には注意が必要です。
パンは水分量が少ないためパサつきやすく、口腔内でまとまりにくい性質があります。一方で、形状や水分量を調整することで、嚥下食として取り入れやすくなります。
本記事では、嚥下食でパンを取り入れる際の注意点や食べやすくする工夫、嚥下状態に合わせた調整方法を解説します。
目次index
嚥下食にパンは取り入れられる?
パンを嚥下食として取り入れる際は、そのまま提供せず、形状や水分量を調整して提供することが基本です。安全にかつ食べやすく整えるためには、パンの特有の性質を正しく理解しましょう。
パンが飲み込みにくい理由と食形態との関係
パンが飲み込みにくい理由の一つに、パサつきやすい点が挙げられます。パンは多孔質(内部に空気の穴が多い構造)で吸水性が高く、口腔内の唾液を奪ってしまうため、パサつきがさらに強くなり飲み込みにくくなるという特徴があります。
また、口腔から喉へ送り込むのに時間がかかると、パンは唾液などの水分を吸って膨らみ、口腔内や喉に付着しやすくなります。こうなると、喉の奥に残りやすくなり、窒息のリスクも伴います。
パンが飲み込みにくい理由を知るには、摂食や嚥下の基本的な流れを理解することが大切です。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「嚥下調整食とは? 医療・介護現場で役立つ段階別食形態の基礎知識」
嚥下食でパンを食べやすくする工夫

ここでは、パンを嚥下食として食べやすくする工夫について、解説します。
形状と水分量の調整
パンは、大きさを調整したうえで、水分を含ませ、必要に応じてつぶすなどして食べやすい状態に整えます。
形状を整えるには、次のような方法があります。
・ミミを除く
・小さく切る、またはちぎるなどして大きさを整える
・牛乳やスープなどで十分に浸す
・必要に応じてつぶし、ペースト状にするなど形状を調整する
嚥下調整食の分類に合わせた調整
嚥下食としてパンを取り入れる場合も、一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会が示す「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」の分類に基づき、形状ややわらかさを整えることが基本となります。
パン粥の基本的な作り方や提供時のポイントについては、以下の記事をご覧ください。
「パン粥は嚥下食でいつから使える?学会分類2021に基づくレベル別の目安と基本の作り方」
嚥下状態に合わせたパンの調整例
パンを嚥下食として取り入れる場合、パン粥を基本に形状を整える方法が用いられます。パン粥は、パンに水分を含ませてやわらかくした料理で、嚥下状態に合わせて形状を調整しやすい特徴があります。ここでは、嚥下状態に応じたパンの調整例として、パン粥を使ったレシピをコード別に紹介します。
【レシピ例】パン粥ゼリー(コード1j相当)
小さくカットした食パンにゲル化剤を用いてゼリー状に整えることで、まとまりのある形に仕上げます。
【作り方の例】
1. 食パンはミミを取り除き、小さく切る。
2. ミキサーに水とゲル化剤を入れて撹拌(かくはん)する。
3. 食パンと牛乳を加え、なめらかになるまで十分に撹拌する。
4. 鍋に移し、かき混ぜながら加熱する。
5. 器に移し、冷ましてゼリー状にかためる。
※ゲル化剤の種類によって、かためる温度や使用量が異なります。適量・適温を守りながら調整を行いましょう。
【レシピ例】パンペースト(コード2-1相当)
コード2-1相当では、食塊(しょくかい)のないペースト状に整えます。なめらかさと均一性を保つことがポイントです。
【作り方の例】
1. 食パンはミミを取り除き、小さく切る。
2. 鍋に食パンと牛乳、砂糖を入れる。
3. 弱火にかけ、かき混ぜながらやわらかくなるまで加熱する。
4. ミキサーに入れ、なめらかになるまで十分に撹拌する。
5. 必要に応じて裏ごしし、食塊やざらつきが残っていないか確認する。
【レシピ例】パン粥つぶし(コード3相当)
コード3相当では、やわらかくなるまで浸したパンをつぶして整えます。食べやすさに配慮し、乾燥を避けるためにも水分量を保つことが重要です。
【作り方の例】
1. 食パンはミミを取り除き、小さく切る。
2. 鍋に食パンと牛乳、砂糖を入れ、パンが十分に水分を吸うまで置く。
3. 弱火にかけ、かき混ぜながらやわらかくなるまで加熱する。
4. フォークなどで細かくつぶし、食塊が残っていないか確認する。
いずれのレシピも、嚥下状態に合わせて水分量やとろみ、ゲル化剤などでかたさやまとまりを調整してください。提供前には、食塊やざらつきが残っていないかを必ず確認しましょう。
パン粥のアレンジ方法の詳細について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「いつもの味に一工夫!パン粥のアレンジ方法」
市販のパンを選ぶときの目安
市販のパンの中には、「やわらかい」「しっとり」などと表示された商品があります。しかし、これらの表現は一般向けの食感を表すメーカー独自のものであり、必ずしも嚥下に適した基準を満たしているわけではありません。表示だけで自己判断せず、実際の状態を確認することが大切です。
食べやすさの目安として、市販の介護食品ではユニバーサルデザインフード(UDF)などの区分表示が用いられています。パンの中にも、商品によっては「そしゃく力」「飲み込む力」などを基準とした区分が表示されているものがあります。
食べやすさは個人によって異なるため、区分表示も参考にしながら選ぶことが大切です。介護食品の表示について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「嚥下食の分類まとめ|学会基準と実務での活用」
パンが好きな高齢者への対応と栄養の工夫

高齢者の中には、パンを好んで召し上がる方もいらっしゃいます。その嗜好(しこう)を尊重することが、食事量の確保や食べる意欲の向上につながるケースもあります。まずは嚥下機能を正しく評価し、パンを取り入れることが適切かを判断することが必要です。適さない場合は無理に提供せず、パン以外の食品も含めて状態に合った食形態を選びます。
また、パンは炭水化物が主成分の食品です。単体では栄養バランスが偏りがちになる傾向があります。不足しがちな栄養素を補うことで、栄養バランスを整える工夫が求められます。
次のような工夫で、栄養面を考えていきましょう。
・卵やチーズを加えてたんぱく質を補う
・バターや油脂を加えてエネルギーを補う
・スープと組み合わせて水分補給につなげる
高齢者の場合、身体的特徴や食習慣の影響によって低栄養が起こりやすくなることがあります。より詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
「高齢者の栄養の管理ポイント たんぱく質とカロリーを効率的に補う方法」
【まとめ】パンは形状調整を前提に考える
パンは水分量が少なくパサつきやすく、口腔内でまとまりにくい特徴があります。また、水分を吸って膨らみ、口腔内や喉に貼りつきやすくなるため、嚥下機能が低下している場合には飲み込みにくくなります。
嚥下食として取り入れる場合は、パン粥を基本にゼリー状やペースト状、つぶしなどに整え、嚥下状態に合わせて提供します。体調や食べる様子を確認しながら、無理のない形で取り入れていきましょう。
※記事中の写真・イラストは全てイメージです。
この記事の監修
栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。