2026 02 . 11
介護の基礎知識嚥下調整食とは? 医療・介護現場で役立つ段階別食形態の基礎知識
嚥下調整食とは、飲み込みに不安がある方でもスムーズに召し上がれるよう、かたさや形状を調整した食事です。本記事では段階別の食形態や利用者の状態に応じた調整の基礎知識を解説します。

加齢や疾患を理由に、食べ物のそしゃくや飲み込みが難しくなることがあります。調理方法を見直さず、通常の食事形態を続けると、誤嚥や低栄養のリスクが高まります。こうした方のために提供されるのが「嚥下調整食」です。
本記事では、摂食・嚥下の基本的な流れを確認したうえで、嚥下調整食の目的、医療・介護現場で使われる分類基準、利用者の状態に応じた調整の考え方を整理して解説します。
目次index
摂食・嚥下の基礎:食べる・飲み込む流れ
高齢者や病気の影響で飲み込みが難しくなると、誤嚥や食欲低下のリスクが高まります。そのため、食事を提供する側は食べ物が口から胃に届くまでの流れを理解することが大切です。
「摂食・嚥下」とは、食べ物を認識して口に入れ、そしゃくして飲み込み、食道を通って胃に送り届けるまでの一連の過程です。「摂食」は食べること、「嚥下」は飲み込む動作を意味します。流れは次の5つの段階に分けられます。
①先行期(せんこうき)
食べ物の見た目や匂いなどを認識したうえで、どの食品をどの順番で、どのくらい食べるかを決める段階です。唾液の分泌も促されるため、口の中の準備が整います。
②準備期(じゅんびき)
口に入れた食べ物を噛み砕き、唾液と混ぜ合わせることで食塊(しょっかい)を形成する段階です。そしゃくによって食塊の大きさや形が整うと、飲み込みやすい状態になります。
③口腔期(こうくうき)
舌の前後運動によって、食塊を咽頭へ送り出す段階です。ここでは、口腔内で食べ物をまとめる力や舌の動きが重要なポイントです。
④ 咽頭期(いんとうき)
喉の反射運動(嚥下反射)を使い、食塊を食道へ送り込む段階です。喉頭蓋(こうとうがい)が閉じて気管をふさぐことで、食べ物が誤って肺のほうへ入ることを防ぎます。
⑤ 食道期(しょくどうき)
食道の蠕動(ぜんどう)運動により、食塊が胃に送り込まれる段階です。この段階から消化が始まります。
各段階での食形態の役割
食事の形状は、各段階の動作を助ける役割を持っています。
●口腔期では、口の中でまとめやすい形状が必要です。ばらけやすい食品は、舌で送りにくくなります。
●咽頭期では、まとまりがあり、喉を通りやすい状態が求められます。液体のように流れが速いと誤嚥の危険が高まります。
つまり、食形態は単にやわらかさだけでなく、口の中で扱いやすく、喉を通りやすい状態に整えることが重要です。
嚥下調整食とは何か:目的と役割
嚥下調整食は、そしゃくや飲み込みなどの嚥下機能が低下している方の状態に合わせて、食材のかたさや粘度、食塊のまとまり具合、ばらつきなどを調整した食事です。嚥下訓練として使用される食品も含まれます。
嚥下障害との関係
加齢や脳血管疾患、神経疾患などで嚥下機能が低下すると、通常の食事では次のような問題が生じやすくなります。
●食べ物や飲み物が気管に入りやすい
●食事量が減少しやすい
●水分補給が難しくなる
食材や形状だけでなく状態に応じた調整の重要性
嚥下調整食では、単にやわらかくするだけでなく、利用者の状態に応じて食材や液体の性状を整えることが求められています。摂食しやすさに配慮して、調整される性状には次のものがあります。
●かたさ:噛む力や口腔内の動きに合わせて調整
●口の中でのまとまり:食塊をまとめて送りやすくする
●粘度(とろみ):飲み込みやすいとろみに調整
●ばらけにくさ:口の中で散らばらず扱いやすい形状
やわらかすぎて水分が分離しやすい食品は、かえって飲み込みにくくなることがあります。嚥下機能や体調に応じて形態や性状を整えることで、食べやすい食事になります。
また、高齢者ならではの身体的特徴や食習慣の影響を理解しておくことも、誤嚥予防につながります。
より詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください
「高齢者の栄養失調が起こる要因と対策」
「高齢者の低栄養を防ぐ 栄養管理のポイント」
「高齢者の栄養の管理ポイント たんぱく質とカロリーを効率的に補う方法」
医療・介護現場で使われる嚥下調整食の基準と段階

一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類 2021」は、医療・介護の現場で広く用いられている基準です。共通の分類を用いることで、医療従事者・介護職員・管理栄養士・調理スタッフが同じ認識をもとに適切な食事を提供できます。
学会分類の概要(2013→2021改訂)
学会分類は、病院・施設・在宅介護などさまざまな場面で共通の目安として使われています。基本的な段階構造は2013年版を踏襲していますが、2021年改訂では現場での活用しやすさが強化されました。主な改訂点は以下のとおりです。
●食事分類ととろみ分類を整理し、段階ごとの形態をより平易な日本語で表現
●とろみ付き液体の評価に、10mLシリンジで10秒後に残る量を確認する簡易評価を追加
この改訂により、多職種間での共通認識を持ちながら、実務における利便性が向上しました。
詳しい分類の考え方については以下の記事も参考にしてください。
「嚥下(えんげ)食とは? その必要性と分類について」
「嚥下食の分類まとめ|学会基準と実務での活用」
段階別食形態と対象者の目安(コード0~4)
嚥下調整食は、利用者の嚥下機能やそしゃく力に応じて段階的に設定されます。形状は、ペースト状や液体から、やわらかく形を保った食事へと変化します。
| 学会分類コード | 食形態 | 必要な嚥下能力 |
| 0 | とろみ付きの液体 | 若干の送り込み能力 |
| 1 | ゼリー・プリン・ムース状 | 若干の食塊保持と送り込み能力 |
| 2 | ミキサー食・ペースト食 | 下顎と舌の前後運動による食塊形成・保持能力 |
| 3 | ソフト食(やわらか食) | 口蓋(こうがい)間の押しつぶし能力以上 |
| 4 | 通常形態のやわらか食 | 上下の歯槽堤間(しそうていかん、歯ぐきを指す)の押しつぶし能力 |
食形態の選択は、嚥下機能だけでなく、体調や回復状況、食事量、栄養状態、疲労の有無、食事姿勢や環境も考慮しています。嚥下調整食は単なる料理の種類ではなく、利用者の生活全般を支える食事調整です。
各コードの詳しい考え方については、以下の記事も参考にしてください。
「嚥下調整食2(コード2)とは? 2-1/2-2の違い・献立の考え方・形態調整のポイント」
「嚥下食3(コード3)とは?嚥下調整食の分類と食事例&調理ポイント」
「嚥下調整食4(コード4)とは?他コードとの違い・献立例・注意したい食品をわかりやすく解説」
【まとめ】嚥下調整食は食形態だけでなく状態に応じた食事

嚥下調整食は、飲み込みやそしゃくといった嚥下機能の低下が見られる場合でも食事を続けやすくするための調整です。食材のかたさやまとまり、液体の粘度を整えることで、誤嚥や低栄養のリスクを減らせます。
嚥下調整食で大切なのは、やわらかく仕上げるだけではなく、利用者の状態に適切な形態を選び、「食べる」楽しみを支え続けることです。
※記事掲載のイラスト・写真はすべてイメージです。
この記事の監修
栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。