2026 03 . 18
介護の基礎知識嚥下食のムース食とは?特徴・違い・取り入れ方を解説
嚥下食のムース食とは何かを解説。特徴や位置づけ、ペースト食・ソフト食との違い、取り入れる際の注意点や市販品活用のポイントまで紹介します。嚥下機能に応じた食形態の選択の参考にしてください。

食事中にむせたり、食べ物を口腔内でうまくまとめられなくなったりすることがあります。これは、嚥下機能やそしゃく力の低下によって、食べ物を喉へ送り込むことが難しくなっているサインです。このような状況がある場合、嚥下食の選択肢として「ムース食」が挙げられます。
本記事では、ムース食の基本的な特徴と位置づけ、ペースト食やソフト食との違い、取り入れる際の留意点について解説します。
目次index
嚥下食のムース食ってどんな食事?
ムース食とは、やわらかくした食材をミキサーなどで撹拌(かくはん)し、ゲル化剤を用いて成形した食事形態です。舌と口蓋(こうがい)で押しつぶせるやわらかさが目安で、口当たりが均一になっているため、口腔内で食塊(しょっかい)としてまとまりやすいのが特徴です。
一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会が示す「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」(以下、「学会分類2021」)によると、ムース食は主にコード3に該当する形態とされています。
さらに、ムース食の特徴や取り入れ方について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「【嚥下食コード3対応】家庭でもできる!やさしく食べられるレシピと調理のコツと注意点」
ムース食とペースト食・ソフト食の違い

ムース食がどのようなものかを知るには、前後の食形態に相当するペースト食とソフト食の違いを整理することが重要です。
ペースト食との違い
ペースト食(ミキサー食)は、食材をなめらかで均質な状態に整えた形態です。主にコード2に該当します。スプーンですくって食べられ、口腔内で食塊にまとめやすいことが特徴です。一方、コード3のムース食は、ペースト状の食材をゲル化剤で固めて食べやすい形に整えています。舌で簡単につぶせるやわらかさを保ちつつ、口腔内でばらつきにくく、スムーズに飲み込めます。コード2と比べてコード3は、まとまりやすさ(凝集性)、べたつきにくさ(付着性)、やわらかさ(硬さ)の幅が広いのが特徴です。
嚥下食の分類やほかの嚥下食の特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「ミキサー食とムース食の違いとは? 嚥下状態に合わせた選び方や調理方法をわかりやすく解説」
ソフト食との違い
ムース食はソフト食の一種で、ミキサーですりつぶした食材をゲル化剤で固めて成形したものです。そのためムース食とソフト食は同じコード3に該当します。ムース食が食材をミキサーにかけたものをゲル化剤などで固めなおしたものであるのに対し、ソフト食は歯ぐきや舌と口蓋で押しつぶせるやわらかさがありながら、食材そのものの形状や食感が残っているものも含まれるのが特徴です。
嚥下食の分類やほかの嚥下食の特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「ミキサー食とソフト食の違いとは?特徴・調理のポイント・選び方までわかりやすく解説」
ムース食を取り入れるメリットと気をつけたい点

ムース食を取り入れる大きなメリットは、なめらかさとまとまりのバランスが取れている点です。スプーンですくいやすく、かつ喉ごしが良いため、召し上がる方と介助者の双方にとって扱いやすい形態といえます。
一方で、ムース食を適切な形態に整えるためには注意が必要です。水分量が多すぎるとまとまりが弱くなり、かたすぎると舌と口蓋で押しつぶしにくくなります。それを避けるためにも、離水の状態やスプーンですくった時のまとまり具合を確認することが求められています。
また、口当たりを優先して水分を増やすと、エネルギーやたんぱく質の摂取量が不足することがあります。召し上がる食事量が限られる方は、少量でも必要な栄養が確保できるよう工夫します。
栄養管理の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
「嚥下調整食は栄養価が下がる?低栄養を防ぐ実践ポイント」
ムース食の基本や調理上の注意点については、以下の記事も参考にしてください。
「ムース食とは?作り方のポイントや注意点を解説」
ムース食の取り入れ方
ムース食は、手作りでも市販品でも取り入れることが可能です。調理体制や召し上がる方の状態に応じて適切な選択をします。
手作りする場合
ご家庭でムース食を手作りする場合、「加熱→粉砕→凝固」の3ステップが基本です。まず食材を芯までやわらかく加熱し、ミキサーで食材の粒が残らないよう撹拌または粉砕します。そこに、温度帯に合わせたゲル化剤を加えて形を整えることで、ムース特有の「保形性」が生まれます。
ご飯の例
【作り方】
1.温かい全粥を容器に入れる。
2.ゲル化剤を加える。
3.ミキサーで十分に撹拌(かくはん)し、なめらかな状態に整える。
4.型に流し入れ、製品の指示に従って冷却・固化させる。
【ポイント】
•ゲル化剤の種類によって温度条件や固化方法が異なります。必ず製品の指示に従ってください。
•エネルギー量を補いたい場合は、油脂類(例:MCTオイル)を加えて調整します。栄養状態に応じて量を検討します。
•食材の粒の残りがないか、均一に整っているかを確認します。
嚥下調整食の調整のポイントや献立の立て方については、以下の記事も参考にしてください。
「ミキサー食とは?作り方のポイントや注意点を解説」
市販品を活用する場合
手作りと市販品をバランス良く併用することで、無理なく、継続できる環境を整えることができます。市販品を選ぶ際は、まず商品の形態が召し上がる方の状態に適しているかを確認することが重要です。あわせて、パッケージに記載されたユニバーサルデザインフード(以下:UDF)区分や学会分類コード、原材料、栄養バランス(エネルギー量やたんぱく質、食塩相当量など)の確認も必要です。
UDFの区分や学会基準との違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「嚥下食の分類まとめ|学会基準と実務での活用」
また、ムース食の市販品の取り入れ方については、次の記事も参考にしてください。
「通販で手軽に始める嚥下食・介護食!冷凍・レトルト・市販商品の選び方と活用法」
【まとめ】名称よりも状態を確認する
ムース食は、なめらかさとまとまりを保ちやすく、形状を維持できることが特徴の食形態です。嚥下調整食分類では主にコード3に位置づけられていますが、同じコード内でもかたさやまとまりには幅があります。
ただ単に「ムース食」という名称だけで判断するのではなく、実際の仕上がりが舌と口蓋で押しつぶせる状態かどうかを確認しながら取り入れることが大切です。手作り・市販品いずれの場合も、形状の安定性やまとまりを意識し、利用者の嚥下機能に応じて活用していきましょう。
※記事中の写真・イラストは全てイメージです。
この記事の監修
栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。