2025 12 . 17
高齢者の栄養嚥下食をおいしく作る!家庭・施設で実践できる調理の工夫とメニュー例
嚥下食はちょっとした工夫で、見た目も味もおいしく仕上げられます。本記事では、ご家庭や施設で実践できる調理の工夫や、彩り豊かな副菜・デザートを含むメニュー例をご紹介。少量でも栄養と満足感を高めるポイントも解説します。

嚥下食は安全性を考慮するあまり、味付けや見た目が物足りなく感じられることがあります。しかし、ちょっとした工夫をすることで、食べる本人が笑顔になり、「また食べたい」と思える、おいしくて魅力的な献立に近づけることが可能です。
本記事では、嚥下食をよりおいしくする基本の考え方や、ご家庭や施設で実践できる調理の工夫、味や栄養を意識したメニュー例をご紹介します。
目次index
嚥下食でも「おいしい」を実現するための3つの基本
嚥下食のおいしさは、単に味付けだけでなく「香り」「見た目」「温度」の要素が重なり合って決まります。口にする前から「おいしそう」と感じられることが、食欲や食べやすさに直結する重要なポイントです。ここでは、ご家庭でも施設でも取り入れやすい3つの基本をご紹介します。
1. 食べやすさと味のバランスを整える
嚥下食の調理では、とろみのつけ方や食材のやわらかさが安全性に直結します。食材を十分にやわらかく煮込み、ミキサーでなめらかにした後に、出汁や牛乳、香味野菜を活用して風味豊かに仕上げることが重要です。
たとえば、鶏ひき肉や白身魚を出汁で煮てミキサーにかけると、舌触りがなめらかで飲み込みやすくなり、味に深みが増します。さらに、香りのあるハーブや少量の調味料で味を調えると、食欲をそそる仕上がりになります。
2. 色の組み合わせで食欲を刺激する
嚥下食は色が単調になりやすく、見た目が物足りない印象になることがあります。しかし、にんじんやかぼちゃ、ほうれん草など、彩り豊かなペーストを組み合わせるだけで、食卓が華やかになり、「食べたい」という意欲を引き出すことができます。
3. 香りと温度でおいしさを引き出す
温度が低いと味や香りの印象は弱くなります。器を温める、少量ずつ仕上げるなどの工夫をすることで、香りが立ち、食欲を刺激します。また、生姜や柚子、ごま油など香りのアクセントを食べる前に加えることで、「おいしそう」と感じやすくなります。
嚥下食の献立作りはさまざまなポイントがあります。さらにポイントを知りたい方は「手作りできる嚥下食献立|家庭でもできる段階別工夫と調理のヒント」もご覧ください。
食べる人が笑顔に!簡単でおいしい嚥下食メニュー例

ここからは、ご家庭でも施設でも作りやすい代表的なメニュー例をご紹介します。嚥下状態に合わせて、とろみや食感を工夫して提供すると、より食べやすくなります。
メインディッシュにおすすめの肉・魚メニュー
●挽肉じゃが
ゴロゴロした具材が特徴の肉じゃがも、じゃがいも・にんじん・玉ねぎをやわらかく煮込んでミキサーにかけることで、なめらかで、飲み込みやすい一品になります。食材本来の色合いがそのまま彩りとなるため、食卓を明るく演出できます。
詳しい作り方は「【肉を使った嚥下食レシピ】挽肉じゃが」をご覧ください。
●白身魚のふんわりムース
白身魚をムース状に仕上げることで、舌でつぶせるやわらかな食感にします。細かくほぐした魚を、お湯と一緒にハンドブレンダーで攪拌(かくはん)し、常温でも固まるタイプの固形化補助食品を加えると、均一でなめらかな舌触りのムースになります。
蒸す、または型に流して冷やすだけで仕上がり、出汁を加えることで魚の旨みがより引き立ちます。
彩り副菜&デザートのアイデア
●ほうれん草のなめらかなお浸し
十分に加熱したほうれん草をミキサーにかけ、なめらかにします。出汁などでのばすことで舌触りが安定し、必要に応じてとろみ調整食品を加えると、飲み込みやすくなります。
●かぼちゃのポタージュ
かぼちゃと玉ねぎをやわらかく煮込み、牛乳と一緒にミキサーにかけ、なめらかに仕上げたポタージュです。チキンブイヨンや少量の砂糖・塩で味を整えることで、やさしい甘みとコクが楽しめます。彩りのパセリは、嚥下状態に応じて刻むかペースト状にして加えると安全です。
●ほろ苦コーヒーゼリー
コーヒー豆または市販のアイスコーヒーを用いた、甘さ控えめの大人向けのデザートです。ゼラチンでかためることで安全に提供でき、さいの目状にカットして盛り付けることで簡単に提供できます。ミントを添えると香りのアクセントにもなります。
詳しい作り方は「【嚥下食デザート】ほろ苦コーヒーゼリー」をご覧ください。
また、デザートを添えるメリットは「混ぜて冷やすだけでおいしい! 嚥下食のデザートレシピ」をご覧ください。
市販品+ひと工夫で簡単アレンジも
冷凍やレトルトの嚥下調整食、やわらか食に少し手を加えるだけで、味や香りの変化が楽しめます。
●嚥下食のおかずに少量の出汁を加えて温め直す
●香りのよいごま油を数滴加える
●ヨーグルトやとろみつき果汁を組み合わせてデザートに
ちょっとした"ひと工夫"で味わいがさらにアップし、忙しい現場でも効率的に調理できます。
また、通販や宅配サービスの活用で、お手軽に栄養や味付けに配慮した嚥下食を取り入れることができます。
詳しくは、以下記事もご覧ください。
「通販で手軽に始める嚥下食・介護食!冷凍・レトルト・市販商品の選び方と活用法」
「宅配嚥下食が人気の理由は?高齢者も安心して選ぶコツ」
味と栄養、満足感を意識した嚥下食のポイント

嚥下食は水分量が多くなりやすく、必要な栄養やカロリーが不足する可能性があります。そのため、少量でも栄養を補う工夫が重要です。副菜やデザート、彩りの工夫をすることで、食事全体の満足度向上にもつながります。
主食・主菜・副菜の組み合わせで彩り豊かに
色の調和がとれていると見た目の満足感も高まり、食べる意欲につながります。
<組み合わせ例>
●主食:全粥 (白)
●主菜:鮭のムース (赤~ピンク)
●副菜:ほうれん草のなめらかなお浸し (緑)
主食に役立つゼリー粥やパン粥の作り方のポイントは、
「嚥下食レシピ ゼリー粥基本の作り方からアレンジまで」
「【高齢者向け】パン粥とは? 基本の作り方とポイントをご紹介」を参考にしてください。
少量でも栄養と満足感を高める工夫
●栄養面:卵・乳製品・豆類など、少量でたんぱく質が摂れる食材を活用することで、摂取量が少なくても栄養を補いやすくなります。
●見た目や味の工夫:彩りや盛り付けの工夫や、デザートや副菜で味や食感に変化をつけることで、食欲が高まります。
●五感で楽しむ:味付け・香り・温度・色・器の工夫を意識することで、少量でも「おいしい」と感じやすくなります。
●個人の好みを活かす:出身地の味付けや思い出の料理など、個人の好みに合わせた調味で前向きな気持ちを引き出せます。
嚥下食をおいしく作るためには、調理の工夫だけでなく、高齢者の栄養や食事全体の管理についても理解しておくことが大切です。詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
「高齢者の栄養失調が起こる要因と対策」
「高齢者の低栄養を防ぐ 栄養管理のポイント」
「高齢者の栄養の管理ポイント たんぱく質とカロリーを効率的に補う方法」
【まとめ】嚥下食のおいしさは笑顔につながる
嚥下食は、安全に配慮しながらも、味付けや見た目、香りを工夫することで「食べる喜び」を届けられます。調理スタッフや栄養士、介護スタッフが連携し、工夫を凝らすことが、食事の質を高めるポイントです。
また、手作りだけでなく、市販品や宅配サービスを上手に活用して、味付けや香りに変化を加えることで、手軽に栄養価とおいしさを向上することもできます。
今日から、彩りや香り、味付けにちょっとした工夫を加えて、よりおいしく、食べやすい嚥下食を届けましょう。
※記事掲載のイラスト・写真はすべてイメージです。
この記事の監修
栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。