2026 01 . 14
高齢者の栄養嚥下食にうなぎを取り入れるには? 安全に提供するための考え方と注意点
嚥下食にうなぎを安全に取り入れる方法を解説。特徴やリスク、調理・盛り付けの仕方、市販品を活用した食べやすい工夫まで紹介します。

土用の丑(うし)の日の行事として親しまれる「うなぎ」は、たんぱく質が豊富でビタミンAやカルシウム、鉄分も含む栄養価の高い食材です。嚥下障害のある方でも食事に取り入れたい一品ですが、通常の調理方法で提供するとなると、小骨や皮の弾力による誤嚥のリスクがあります。安全に召し上がってもらうためには、形態や調理方法を検討することが大切です。
本記事では、嚥下食として安全に提供する方法、調理の仕方、市販品を活用した食べやすい工夫を紹介します。
目次index
うなぎはなぜ注意が必要なのか
嚥下機能が低下している方にとって、うなぎの身を通常の調理方法で提供することにはリスクがあります。小骨や皮の弾力、身のまとまりにくさが、誤嚥や窒息の原因につながるからです。
嚥下食として注意したいポイント
1.小骨の多さ
うなぎには細かい小骨が多く、調理で完全に取り除きにくいため、身に残った小骨を口にすることで誤嚥や窒息、粘膜の損傷の原因になります。
2.皮と身の状態
嚥下機能が低下している方にとって、うなぎの皮は弾力があり、舌や歯ぐきで押しつぶすことは容易ではありません。また、身の部分は加熱することで水分が抜けるため、パサついてしまい、嚥下に負担がかかります。
嚥下食としてうなぎを検討する際の基本的な考え方
うなぎを嚥下食として提供する場合は、食べやすい形態に調整することが基本です。
一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」に基づく食事形態コード(0〜4)を目安に、対象者の状態に応じて形態を選びます。
詳しい分類については以下の記事を参考にしてください。
「嚥下(えんげ)食 とは? その必要性と分類について」
「嚥下食の分類まとめ|学会基準と実務での活用」
※食べ慣れや食経験の確認も忘れずに
うなぎは季節の行事食として提供されることが多く、あまり食べ慣れていない方は、味や香り、食感に違和感を覚え、そしゃくや嚥下がスムーズにできない場合があります。提供前には、過去の食経験や食べ慣れの有無を確認しておくと何かと安全です。
※アレルギーへの注意
うなぎはごくまれにアナフィラキシーや食物アレルギーを引き起こすことがあります。初めて食べる方や食べ慣れていない方には、体調や反応に注意したうえで、少量から提供しましょう。
食べやすく工夫するポイント
うなぎを嚥下食として提供する際は、次のような工夫をしましょう。
●小骨を取り除く:小骨は骨抜きを用いて可能な限り取り除きます。
●皮を剥がす:弾力のある皮は嚥下しにくいため、可能な限り除去します。
●形態を調整する:ゼリーやペースト状に加工すると身がまとまり、舌でつぶしやすくなります。味や風味を残すと、行事食としての満足感も高まります。
●身を小さく整える:小骨を取り除いた後、食べやすい大きさに整えると、口内で食塊を作りやすくなるため、安全な飲み込みをサポートします。
※ただし、嚥下食ではきざみ食で形態を整える方法は学会では推奨されていません。
その理由や注意点は、「きざみ食はどんなときに必要?導入時に気をつけるべきポイントは?」をご覧ください。
嚥下食コード別のうなぎの扱い方

うなぎを提供する際の目安をまとめます。対象者の状態によって提供の可否が異なるため、必ず医師の判断をもとに調整するようにしましょう。
コード0(嚥下訓練食品0j/0t)
この段階の食事では、うなぎは原則取り入れることができません。
コード1j(嚥下調整食1j)
うなぎの味や風味を取り入れたゼリー状の食品など、口に入れても安全な状態に加工された「うなぎ風食品」であれば、提供できる場合があります。
コード2(嚥下調整食2‐1/2‐2)
ペーストやピューレ、ミキサー食など、スプーンですくって食べられる状態に整えれば提供可能です。脂の分離や均質性に注意し、うなぎの蒲焼きをだし汁でのばしてなめらかにします。
コード3(嚥下調整食3)
舌で押しつぶせるやわらかさで、骨・皮・繊維が処理されていれば提供可能です。ペーストやミキサーでなめらかにしたうなぎを、とろみ剤や増粘剤などを用いて小さな形に整え、口の中でまとまりやすく嚥下しやすいようにします。
具体的な特徴は「嚥下食3(コード3)とは?嚥下調整食の分類と食事例&調理ポイント」を参考にしてください。
コード4(嚥下調整食4)
やわらかさが保たれていれば提供可能です。噛み応えのある部分や骨は避け、圧力鍋などでやわらかく調理したものを用います。
嚥下食の調理については以下の記事も参考にしてください。
「ミキサー食とは?作り方のポイントや注意点を解説」
「【ミキサーを使った嚥下食】初めてでも大丈夫!作り方・食材の選び方・コツまとめ」
なお、ペーストはミキサー食の一種です。ペーストやムース食の特徴や作り方を知りたい方は、次の記事も参考にしてみてください。
「ミキサー食とペースト食の違いとは? 特徴・作り方・用途のポイント」
「ムース食とは?作り方のポイントや注意点を解説」
嚥下食でも楽しめる蒲焼きペースト(コード2相当)の工夫
蒲焼きをペーストにすることで、スプーンですくって食べられるやわらかさになり、嚥下しやすく加工できます。あらかじめ骨や皮は取り除き、だし汁などを加えてなめらかに整えます。
作り方のポイント
1.うなぎの蒲焼きを容器に入れ、だし汁などでなめらかになるまで撹拌(かくはん)します。
2.とろみをつけて、スプーンですくいやすく調整します。
3.器に盛り付け、少量のたれを加えて味を整えます。
季節感や見た目の工夫
●華やかなお皿や小鉢に盛り付けます。
●周囲に赤・黄・緑など彩りのある野菜や香りのよい食材を少量添えると、視覚的に季節感を演出できます。
●ペーストは高さを少し出して盛り、上部に彩りの具材を重ねると立体感が出て華やかに見えます。
さらに盛り付け方について知りたい方は「見た目にもおいしい!ミキサー食の盛り付け例を紹介!」を参考にしてください。
また、嚥下食の献立づくりのポイントを知りたい方は「手作りできる嚥下食献立|家庭でもできる段階別工夫と調理のヒント」もご覧ください。
市販品を取り入れるという選択
家庭や施設での加工が難しい場合は、市販の嚥下食や介護食品を活用するのも有効です。ユニバーサルデザインフード(UDF)や特別用途食品など、食材のかたさややわらかさの目安が表示されているものがあります。
すでに嚥下しやすく調整された市販のうなぎ風ゼリーやムース食であれば、型抜きで盛り付けたり、香りや彩りを添えたりするだけで、季節感を感じながら食事を楽しめます。
商品の特徴や選び方については、以下の記事も参考にしてください。
「嚥下食ピラミッドの概要と各レベルの分類・詳細」
「通販で手軽に始める嚥下食・介護食!冷凍・レトルト・市販商品の選び方と活用法」
【まとめ】嚥下食でもうなぎを楽しむために

うなぎは小骨や皮の弾力があるため、通常の食事として提供すると嚥下の負担が大きい食材です。そのため、骨や皮を十分に処理し、ペーストやゼリー状などに整えることが、安全に楽しむためのポイントです。盛り付けや型抜き、彩りや香りの工夫で、行事食として季節感を感じながら楽しめます。家庭や施設で加工が難しい場合は、市販のうなぎ風食品を活用するのも選択肢の一つです。嚥下食でも、家族や利用者と一緒に、うなぎを季節の味覚として味わうことができます。
※記事掲載のイラスト・写真はすべてイメージです。
この記事の監修
栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。