2026 01 . 14
介護の基礎知識嚥下食の形態とは? コードの位置付けや変更する際の目安・注意点を解説
嚥下食の形態について、基本的な考え方と食事形態コードの位置付けを解説します。見た目ややわらかさだけで判断せず、誤嚥しやすい形態や、安全に提供するために確認しておきたいポイントを紹介します。

嚥下食は、食べる方のそしゃく・嚥下機能に合わせて食材の形態を調整した食事です。見た目ややわらかさだけでなく、口の中でまとまりやすいか、飲み込みの動きに無理がないかといった点が、安全に食べられるかどうかの判断につながります。
本記事では、嚥下食の基本的な考え方と食事形態コードの位置付け、さらに形態を考える際に確認しておきたいポイントを解説します。
目次index
嚥下食とは
嚥下食とは、飲み込む力(嚥下機能)が低下した方でも安全に食事できるよう、食材の形態やとろみを調整した食事です。
一般には「やわらかい食事」とイメージされがちですが、やわらかさだけでは十分ではありません。口腔内で食べ物がまとまり、咽頭まで無理なく動かせる状態であるかどうかが、誤嚥の起こりやすさに関わります。そのため、嚥下食の形態を考える際には、見た目や感覚だけで判断するのではなく、次のような点を総合的に確認します。
●かたさ:歯や舌でどの程度の力が必要か
●まとまり:口の中で食塊として集まりやすいか
●付着性:口腔内や咽頭に残りにくいか
●離水性:水分と固形が分かれにくいか
これらの視点を踏まえ、食べる方の嚥下機能に合わせた形態を選ぶことが、安全な食事につながります。
「嚥下食ピラミッド」と「食事形態コード」の位置付け
従来の嚥下食は「嚥下食ピラミッド」として、段階的に説明されることがありました。現在は、一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会が示す「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」(以下、「学会分類2021」)が広く用いられており、「食事形態コード(0〜4)」は、形態を共有・整理するための共通の枠組みとして活用されています。
ここで押さえておきたいのは、コードの数字は難易度や優劣を示すものではないという点です。数字が大きいほど良い、あるいは嚥下機能が回復していることを意味するわけではありません。
食事形態は、必要な嚥下能力に応じて選ぶものであり、コードを上げること自体を目的としないことが大切です。安全に食べられる範囲で形態を判断することが、誤嚥予防につながります。詳しい分類の考え方については以下の記事も参考にしてください。
「嚥下(えんげ)食とは? その必要性と分類について」
「嚥下食の分類まとめ|学会基準と実務での活用」
また、学会分類への移行が進む一方で、説明の枠組みとして嚥下食ピラミッドを用いている現場もあります。そのため、「嚥下食ピラミッドの概要と各レベルの分類・詳細」も一緒に理解しておくと役立ちます。
誤嚥しやすい食事形態とは?
誤嚥の起こりやすさは、食材そのものの性質に加え、調理・加工後の食事形態に大きく左右されます。一見やわらかそうに見える食事でも、嚥下動作に合っていない状態では誤嚥を招くおそれがあるため、注意が必要です。
形態として注意が必要な例
●きざみ食
細かくきざむことで、口腔内で散りやすく、まとまりにくくなる場合があります。
きざみ食の問題点については「きざみ食のリスクと課題 続けるべきか廃止すべきか」も参考にしてください。
●水分と固形が分離する料理(離水)
煮物や汁気の多い料理では、水分が先に流れ、固形物が遅れて咽頭へ送られることで、嚥下のタイミングがずれやすくなります。
●口腔内でまとまりにくい食材を使った料理
パサつきやすい食材(例:焼いた白身魚、パンなど)は、調理や加熱の条件によって水分が抜けやすく、食塊が形成されにくい状態になりやすいため、注意が必要です。パンについては、パン粥にすることで嚥下機能が低下した方でも食べやすくなります。
作り方の参考は「嚥下食をおいしく作る!家庭・施設で実践できる調理の工夫とメニュー例」をご覧ください。
嚥下食に適した食材の選び方や、調理・献立の考え方については、以下の記事も参考にしてください。
「ミキサー食とは?作り方のポイントや注意点を解説」
「手作りできる嚥下食献立|家庭でもできる段階別工夫と調理のヒント」
「見た目にもおいしい!ミキサー食の盛り付け例を紹介!」
体調や環境によって変わる誤嚥リスク

嚥下機能は常に一定ではなく、体調や周囲の環境によって変化します。普段は問題なく食べられている食事形態でも、複数の要因が重なり合うことで飲み込みがしにくくなり、誤嚥のリスクが高まる場合があります。
影響を受けやすい要因として、次のようなものがあります。
疲労の蓄積
疲労が蓄積すると、全身の筋力や集中力が低下しやすくなります。噛む・まとめる・飲み込むといった一連の動作が不安定になり、食事に時間がかかったり、途中で疲れて最後まで食べ切るのが難しくなったりする場合があります。
発熱
発熱時は体調の変化が大きく、飲み込みの反応が鈍くなったり、嚥下と呼吸のタイミングが合いにくくなったりすることがあります。体力の消耗や水分不足を伴うことで、普段より飲み込みにくさを感じる場合もあります。
脱水
水分不足になると唾液量が減り、食べ物が口の中でまとまりにくくなります。飲み込んだ後に違和感を訴えたり、何度も飲み直したりする動作が見られることがあります。
口腔内の乾燥や汚染
口腔内が乾いていたり、汚れが残っていたりすると、食べ物の感触が分かりにくくなります。食塊を形成する動作が不安定になり、飲み込みの安全性が低下しやすくなります。いくつかの要因が重なると、通常は問題のない食事形態であっても、飲み込みにくさやむせにつながることがあります。日々の体調や食事中の様子を踏まえながら、食事形態が適しているかをこまめに確認することが重要です。
また、高齢者ならではの身体的特徴や食習慣の影響を理解しておくことも、誤嚥予防につながります。詳細は以下の記事も参考にしてください。
「高齢者が気を付けたい食事と栄養摂取のポイント」
「高齢者の栄養失調が起こる要因と対策」
「高齢者の低栄養を防ぐ 栄養管理のポイント」
嚥下食のレベルを判定する目安

嚥下食のレベルは、「どの形態を食べているか」だけでなく、実際の食べ方や食事中・食後の様子から判断します。
初めて病院や施設に来られた方では、事前に食事形態の調整が行われていない場合もあります。そのため、水分やゼリーを飲んだときにむせや飲みにくさがないかを確認し、問題がなければ、食事量や水分量を少しずつ増やして、安定して食べられるかを見ます。
〈判定のポイント〉
●食事に30分以上かかっていないか
●食事量が7割以上摂れている状態が続いているか
●食事中や食後にむせる、咳き込む様子がないか
●食後に声がガラガラする、痰(たん)が増えるなどの変化がないか
●発熱や息苦しさなど、体調の悪化が見られないか
これらの情報を総合して判断します。食事形態の調整そのものを目的とするものではなく、今の食事で安全に、かつ無理なく食べられているかどうかを基準にすることが大切です。
形態を見直す際の考え方
嚥下食の形態は、明らかなむせがあってから見直すものではありません。むせがあまり見られなくなっても、次のような小さな変化が見直しのサインになることがあります。
〈見直しのサイン〉
●食べるのに時間がかかる
●食事中に疲れやすい
●食後に声の変化や違和感がある
「食べられているか」だけでなく、「無理なく続けられているか」「安全に食事ができているか」という点も確認しましょう。食事形態の変更は、医師や言語聴覚士など専門職の評価を前提に行うことが基本です。安全に食べられる範囲で形態を調整することで、継続しやすい食事につなげられます。
【まとめ】嚥下食の形態は安全な食事に必要なもの
嚥下食の形態は、見た目ややわらかさだけで判断するものではありません。食事形態コードは目安として活用しつつ、実際の食べ方や食事中・食後の様子を踏まえて、無理なく安全に食べられているかを確認することが重要です。
また、誤嚥リスクは調理後の形態や体調によっても変化します。日々の小さな変化に気づきながら、必要に応じて形態を見直すことで、安全で続けやすい食事につながります。
※記事掲載のイラスト・写真はすべてイメージです。
この記事の監修
栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。