2026 02 . 25
高齢者の栄養ミキサー食はカロリー不足になりがち?栄養管理で押さえるべきポイント
「ミキサー食にするとカロリー(エネルギー)が不足するのでは?」と不安を抱く方もいるでしょう。本記事ではミキサー食でカロリー不足が起こりやすい理由と、病院・介護現場での栄養管理の考え方をわかりやすく解説します。

ミキサー食では、食材をなめらかにするため水分を加える工程があるため、「カロリー(エネルギー)や栄養量が足りているか」と気になる方は多いでしょう。
特に在宅介護では、実際にどれくらいのカロリーを摂取しているかを把握しにくく、判断に迷うことも少なくありません。本記事では、ミキサー食でカロリー不足が起こりやすい理由と、家庭・施設で意識したい栄養管理のポイントを解説します。
※本記事では日常的な伝わりやすさを考慮し、「カロリー」と表記している箇所があります。正式な用語は「エネルギー(kcal)」です。
目次index
ミキサー食とは|嚥下調整食分類(コード2相当)で理解する食事形態
ミキサー食は、口腔内で簡単な動作により食塊をまとめやすくすることを目的に、食材を撹拌(かくはん)し均一な状態に整えた食事です。咽頭へ送り込みやすいのが特徴です。
一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会が示す「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021」では、この形態はコード2に相当します。主に、そしゃくや嚥下の機能が低下している場合や、一時的に食事形態の調整が必要な場合に用いられます。
詳しい分類や考え方については、以下の記事も参考にしてください。
「嚥下(えんげ)食とは? その必要性と分類について」
「嚥下食の分類まとめ|学会基準と実務での活用」
「嚥下調整食2(コード2)とは? 2-1/2-2の違い・献立の考え方・形態調整のポイント」
ミキサー食とペースト食の違い|形状・粒の有無の整理
ミキサー食と混同されやすい「ペースト食」ですが、いずれも学会分類上コード2に含まれます。ただし、形状には違いがあります。
●ミキサー食(コード2-2相当):不均質な粒感が残る場合あり
●ペースト食(コード2-1相当):なめらかで粒感はほとんどない
呼称や仕上がりはご家庭や施設によって異なるため、名称だけで自己判断せず、実際の形状を目視で確認することが重要です。
コード2の特徴や使い分けについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
「ミキサー食とペースト食の違いとは? 特徴・作り方・用途のポイント」
ミキサー食でカロリー不足が起こりやすいとされる背景

ミキサー食は、食形態の特性上、調理工程での加水や食事量の低下により、結果として摂取エネルギーが不足しやすくなることがあります。背景として、以下の点が挙げられます。
加水調整による栄養素密度の低下
ミキサー食を調理する際、なめらかさとまとまりやすさを優先して水や出汁を加えると、エネルギーやたんぱく質、脂質、微量栄養素を含めた栄養素密度が低下することがあります。そのため、食事全体の栄養摂取に影響することが考えられます。
実際の摂取量にばらつきが生じやすい
体調や食欲の影響を受けやすく、食事が思うように進まない、食べ残しが生じることがあります。献立表上の栄養価は充足していても、こうした状況が続くと実際の摂取量は不足しやすくなるため、摂取状況や体重変化を一緒に確認することが必要です。
不足を防ぐための食事の工夫
ミキサー食では、提供量だけでなく栄養のとりやすさを意識した工夫が重要です。
●水分量を調整し、少量でも栄養を確保しやすい濃度に整える
●粉末たんぱく質やオイルを活用し、エネルギーやたんぱく質を補う
栄養素密度について知りたい方や高める考え方は、以下の記事も参考にしてください。
「嚥下調整食は栄養価が下がる?低栄養を防ぐ実践ポイント」
カロリーを把握・評価するポイント
ミキサー食は見た目に比べてエネルギー量が低くなりやすいため、実際の摂取量を把握することが大切です。ご家庭でも施設でも、次の視点で確認しましょう。
●実際の摂取量の確認
献立の量ではなく、完食できているか、食べ残しが続いていないか、食事に時間がかかりすぎていないかを確認します。
●1日・数日単位での把握
カロリーは、1食ごとまたは単日の数値で判断せず、数日間の合計の摂取状況を軸に把握することが重要です。
●体重や体調の変化の確認
体重の推移や食欲の変化を合わせて確認し、摂取量が安定しているかを評価します。変化が見られる場合は、食事内容や濃度の見直しを検討します。
万が一、形態調整が必要な場合は、以下の記事も参考にしてください。
「嚥下食の形態とは? コードの位置づけや変更する際の目安・注意点を解説」
数値にとらわれない栄養管理の考え方
成分値は、主に文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」を用いますが、そこに示される数値は理論上の計算値です。実際の食事では、調理条件や加水量、食べ方によって摂取量に差が生じることがあります。そのため、数値はあくまで参考とし、摂取状況や体重変化を確認しながら、継続可能な食事形態や調理方法を調整しましょう。
具体的なミキサー食の作り方やポイントは、以下の記事を参考にしてください。
「ミキサー食とは?作り方のポイントや注意点を解説」
「【ミキサーを使った嚥下食】初めてでも大丈夫!作り方・食材の選び方・コツまとめ」
「ミキサー食の人気おすすめレシピ!家庭・施設で簡単に作れる肉・魚・野菜・デザートをご紹介」
「手作りできる嚥下食献立|家庭でもできる段階別工夫と調理のヒント」
家庭・施設でのミキサー食|環境に合った工夫を
ご家庭では調理器具や時間に制約があるため、毎食の細かな調整が難しい場合も考えられます。その際に市販品や宅配食を活用すると、必要な栄養を効率的に補いやすくなります。
また、施設での提供でも、一定の基準で調理・提供される一方で、作業負担や安定供給の課題があります。状況に応じて外部サービスを取り入れることも選択肢の一つです。
家庭や施設で市販の嚥下食や宅配食を活用する際は、選び方や使い方について以下の記事も参考にしてください。
「通販で手軽に始める嚥下食・介護食!冷凍・レトルト・市販商品の選び方と活用法」
「宅配嚥下食が人気の理由は?高齢者も安心して選ぶコツ」
「嚥下食の宅配サービスとは? 施設や病院で広がる新しい食事支援のかたち」
「高齢者向け宅配弁当の選び方|施設導入の際のポイント」
「忙しい施設必見!高齢者向け冷凍宅配弁当サービスの導入5つのメリットと活用法」
不安がある場合に相談すべき専門職

ミキサー食のエネルギーや栄養バランスにおいて気がかりがある場合は、自己判断せず専門職に相談しましょう。主な相談先として以下の3つがあります。
●医師:体調や疾患に応じて食事や栄養量の調整を判断
●言語聴覚士(ST):嚥下機能を評価し、口腔や咽頭の状態に合わせた食形態や濃度の調整を提案
●管理栄養士:栄養状態を確認し、必要なエネルギーやたんぱく質が摂れるように食事内容や形態を調整
また、上記の3つの相談先以外にも、介護食士や介護食アドバイザーなどの資格保持者に相談するのもおすすめです。
「介護食士とは?資格の取り方・仕事内容をわかりやすく解説」
「介護食アドバイザー資格とは?メリット・取得方法・活かし方を徹底解説」
【まとめ】ミキサー食でカロリー不足を防ぐために
手作りで調理するミキサー食は水分が多くなりやすいため、見た目よりエネルギーやたんぱく質が不足しやすくなるケースがあります。そのため、濃度の調整や油脂・たんぱく質の追加で栄養を補うことが大切です。日々の摂取量や体重の変化を確認し、必要に応じて食形態や献立を見直しましょう。気がかりがある場合は、管理栄養士や医師、言語聴覚士など専門職に相談することもおすすめです。
※記事掲載のイラスト・写真はすべてイメージです。
この記事の監修
栄養士
下口 貴正
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。
長崎・福岡の病院厨房MG、本社勤務を経て、中四国エリア事業部長東海支店部長、京都支店長を歴任。
2013年よりベネッセパレット設立準備室へ異動し現在製造本部責任者として介護食・配食の製造に従事する。